丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

3Dプリント品の防水設計

初めまして。日本大学のTです。今回の防水ケースの試作に関しての記事を担当させていただきます。
完成形の筐体は上部にスピーカと導光体、左右にスイッチ及びUSB充電口あります。雨が降る状況でも使用するため、防水対策が必要になりました。

今回はカバーとケースの接合部の防水対策と、カバー実装部品の防水対策についてブログを書きます。

 

まず取りかかったのが接合部にOリングを入れることです。

カバーはスピーカ側の穴を塞いだものを使用しました。

防水テスト用のカバー(左)とTPU製Oリング(右)

Oリングの制作には3DプリンタとTPU素材を使用しました。ここで、TPUとは熱可塑性ポリウレタンのことで、弾力性のあるプラスチックです。スマホケースなどに使われていますね。
結果は成功!内部には全く水が入っていませんでした。

          

実際のテストの様子はコチラ↓

youtu.be

次に取りかかったのがカバーに実装するスピーカと導光体の防水対策です。カバーとの接合部をシリコンでシーリングすることで防水しましたが、、、水漏れしてしまいました。

原因としては、導光体の長さが短く、シーリング材との密着が足りなかったと予想し、シーリング材が溜まる部分を追加しました。

結果はシーリング部分からの水漏れは見られなかったのですが、内部に水が浸入していました。

な、なんで入っているんだ...?

原因が分からないため、これまで検証してきた手順を戻りつつ実験すると、なんと初めのOリングから漏れていることが判明し、ここで振り出しに戻ってしまいました。

ここでケース側の設計を見直し、Oリングを押している凸形状の凸量を増やす、内壁を作るという変更を加えました。

また、Oリングを印刷する3Dプリンタの変更やTPUからシリコン素材への変更も試しました。         

まず、3Dプリンタの変更についてです。メインで使用しているUPBOX+ではTPUが縦に筋状に割れていました。そこで出番のなかったAdventure3でTPUを印刷したところ、高密度のきれいな印刷ができました。しかし、高さ方向に30%ほどのずれが出るためモデルの修正が必要ですが、Oリングとして使用する場合はこちらの方がよさそうです。

            
続いてシリコン素材でのOリングの作成です。使用したのは【型取り材】【食品用シリコン】HTV-4000というものです。A材B材をよく混ぜて型に流し込むだけという簡単なものです。今回はカバー側の溝に直接流し込むことで成形しました。

自家製シリコンOリング

その結果、同じケースとカバーを使用して、TPU素材とシリコン素材をテストすると、防水ができるときもあれば、できないときもあることが判明しました。原因を探っているとどうやら蓋を固定するネジが怪しいということに。

        

使用していたネジはM3で画像に挙げたネジであればカバーを閉じることはできます。
しかし、防水テストに合格する場合は6mmのネジを使用した場合に限られることが分かりました。
4mmだとネジを噛んでいる部分が少なくケースの締め付けが足りなくなり、逆に8mmだとネジの先端が底あたることでケースの締め付けが足りなくなるということが原因だと考えられます。ネジくらいなんでも大丈夫だろうと近くにあったものを使用してしまったことが大きな敗因でした。今回のケースの場合は6mmが最適であることが分かったため、必ず6mmのネジを使用することにします。

このような検証から現在の最適な防水形状を紹介します。

ケース側の凸形状は0.5mm、内側の壁は必要ないことが分かりました。また、Oリングに関してはTPUでもシリコンでも問題ありませんが、シリコン素材の硬化時間が8時間というのがネックとなり、今回はAdventure3で印刷したTPU素材のOリングを使用することにしました。この結果防水テストを見事クリアすることに成功しました。
今後はケース側のスイッチ及びUSBコネクタ周辺の防水対策を進めていきます。