丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

3Dプリント部品へのインサートナット圧入

以前の記事で、3Dプリント部品とインサートナットについて触れましたが、今回はもう少し詳しく設計段階から実際の圧入までの過程を書いていきたいと思います。

①圧入式インサートナットの選定

圧入式のインサートナットはいくつか種類がありますがどのような基準で選べば良いのでしょうか?
ダッジインサート】
・相手材が比較的薄いボス厚肉でも圧入可能。
・ビットインサートに比べると値段が高い。
・ネジを下に回していく過程で4本の足が拡がり相手材と固定される。

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ダッジインサート
【ビットインサート】
・汎用品でダッチインサートに比べると値段が安い。
・側面のギザギザ形状によって相手材と固定される。

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ビットインサート
 
今回設計するものは量産用に数百個以上インサートナットを使うこと、ボス肉厚に大きな制約がないことから汎用のビットインサートの中でも挿入方向の指定がないHSB-0000Zシリーズを使うこととしました。
 

②相手材のボス設計

今回はセンサー用のケースにインサートナットを圧入しますが、ケース側のボスはどのように設計すればよいのでしょうか。ボス設計に関して重要なポイントを順に書いていきます。
【ボス径】
今回使用するのは圧入式のインサートナットであるためインサートナットの外径よりもボスの径が小さくなる必要があります。もしボス径をインサートナットと同等または大きく作ってしまうと挿入したインサートナットが緩んでしまいネジを固定できなくなってしまいます。設計例としてM3ネジ用のビットインサートナットHSB-304550Zで考えてみましょう。こちらのインサートナットの最外径はΦ4.8となっているため、ケース側のボス径をΦ4.6とします。
【ボス深さ】
ボス穴の深さについてはインサートナットの長さ+0.5mmというのが私の基準です。0.5mm余裕があると、ボス穴に多少樹脂の残骸などがあってもインサートナットが奥まで入ってくれます。このインサートナットは長さ5mmなのでボス深さを5.5mmとします。
【勾配と入口C面】
径の勾配も気持ち程度で良いので0.5°~1°程度つけましょう。型品にする際には必要になりますし、奥側の圧入力がやや高まります。入口はインサートナットが座りやすいように0.5mm-1mm程度C面取りをしましょう。

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ボス設計寸法
 実際のボスはこんな感じです。

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3d printed ボス

③圧入方法と小道具

つづいて実際の圧入についてです。前回の記事ではトンカチで叩けと書きましたが、ケース側のボス付近の平らな面積が大きくなく、近くに別の凸形状などがあるとケースそのものをトンカチで叩いて壊してしまうおそれがありますので、インサートナットのみをたたくための道具が必要になります。
その道具とは、、、ポンチです。

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ポンチ
ポンチをあてがってその上からたたくときれいに圧入することができます。
私はこちらのポンチを使っています。
ポンチを使う前はプラスドライバーなどをあてがっていましたが、トンカチで叩くとインサートナットにドライバーのプラス形状がついてしまい、最悪の場合ネジ山が壊れてネジが入らなくなってしまいます。圧入の際はぜひポンチを一緒に使いましょう。

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ポンチとトンカチで叩こう