丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

自動運転と凧あげオバサン

先月10月の中旬から2週間ほどアメリカの西海岸に行っていました。今回は4年ぶりに開催されるMaker Faire Bay Areaでの展示と現地での新製品開発の仕込みを行ってきました。

いつも使っていたANAの成田-San Jose便がここ数年なくなっているようだったので今回は羽田-San Francisco便をとりました。10数万円と表示されていたのに支払う段になって燃油サーチャージが上乗せされ値段が倍近くになるのはちょっとやめてほしい。ここまで上がると何か邪な力が働いているのではと考えてしまいます。滞在中は基本的にエンジニアの友人(大先輩)がいるSan Joseを拠点にして、Maker Faire 期間は開催地である北ベイエリアのVallejoという町に3日ほど、最後の数日は親戚が住んでいるSan Franciscoにおじゃまするという旅程です。

無事にSan Francisco空港に到着し、久々に電車に乗りたいと思っていたこともあってSan Joseまでカルトレインで行くことにしました。空港から鉄道駅までのエレベータに乗りスーツケースを持ちながらエレベータの「開」ボタンを押して周りの人が先に降りるよう促していたら恰幅の良いおばさんが「あんたが先に降りな。スーツケースでずっこけたらまずいからね。」とギャハハと豪快に笑い飛ばし先に降ろしてくれました。鉄道駅で一つ不安だったのがチケットが買えるかどうかということ。10年前は紙の切符を買っていたのですが最近は紙が廃止になりスマホアプリか専用のカードになったらしい。自販機を見つめてみたのですがよくわからないしクレジットカードも認証してくれない。困った顔をして買い方を教えてくれと駅員に言ってみたのですが、「あっちの自販機で買えるよ。」で説明は終了。その買い方がわからないのだが…やる気のなさそうな駅員だったのであきらめて誰かに聞く作戦に変更。ちょうどカッコよいビジネスウーマンの方が買おうとしていたので、聞いてみると丁寧に教えてくれて専用カードを買うことができました。毎回旅の最初と最後でずっこけることが多いので一安心して電車に乗ることができました。

久々のカルトレイン

San Francisico空港からMillbrae駅まで行ってSan Jose行きの電車に乗り換えます。10年前初めて訪れたときは車窓からの眩しいばかりの晴天と乾いた空気、広々とした空間とのびのびとした人々から伝わってくる何か新しいものが生まれてくる空気感に興奮したものでしたが、今回はそこまでの高揚はなく(理由は見慣れてしまったか単純に自分が年を取ったから)ただ、また戻って来られたことを嬉しく思いこの空気感を味わえることにじわじわと嬉しさがこみ上げてきました。およそ1時間弱でSan Jose Diridon駅に到着。駅まで友人が迎えに来て下さっていて、そのまま滞在拠点に移動。その後数日は近況報告や今後の開発の話などをしつつ、私は注文数が増えてきたため金型を作らねばならない状況になった新製品の金型用3Dモデルの設計をしていました。ありがたいことに3Dプリンタがあるので距離が離れていてもデータのやり取りができるため、型屋さんが作った最終モデルをこちらで印刷して形状の確認や嵌め合いの確認などができました。3Dモデルから金型用のモデルにデザイン変更する話はまた別の記事で書きたいと思います。

ohmic-electronics.hatenablog.com

 

さて、週末はMaker Faireの開催地Mare Island方面に移動。一気に会場まで向かいます。

工業用の橋を渡りMare Islandに向かう

無事に会場に到着しササっとセットアップ。通算7回目くらいの出展なので慣れたものです。

展示内容は昨年のMaker Faire Orange Countyとほぼ同じリフローマシンとニワトリロボットです。ブース付近はこんな様子。近くにイベントのスポンサーであるMicrochip社がいました。

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4年ぶりの開催となり場所も少し離れたこともあり来場者数がどうなるか気にしていましたが、僕らの心配をよそに展示会が始まるとじわじわとお客さんが増えてきました。

説明する筆者

毎回恒例のロボットを壊さんばかりに遊んでくれるキッズたち。

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アメリカのMaker Faireならではの巨大展示物も健在。

ナウシカに出てくるやつ

屋外の会場も広く最高の雰囲気でした。

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初日の展示会終了後には恒例の打ち上げパーティーがありました。

ビールとタコスで乾杯

展示の時から頻繁に声をかけてくれていた凧揚げチームのおじさんがいたので、声をかけたら色々とお話してくれました。オレゴンから来ていてリーダーのお姉さんと老夫婦の3人チームで出展しているとのこと。世界中の凧揚げ祭りに参加していて、日本の浜松の大会にも出たい!と意気込んでおられました。日本のTraditionalな凧はどんな作り?と聞かれたときは上手く答えられませんでしたが、みんなお正月に遊ぶよという話でごまかしました。リーダーのオニールさんは「SNSやウェブサイトの運営が大変なのよ」とおっしゃっていて、確かにしっかりとしたウェブサイトを作っておられました。

www.fortunafound.com

ウェブサイトの話でいうとイベントの開催地であるVallejoについて調べているときVallejo市のサイトを見つけました。これがまたシンプルでドドーンと町のきれいな写真とともにわかりやすくコンテンツが配置されていて、(実際はいなか町なのだけれども)嘘でもよいからカッコよくおしゃれにみんなが来たいと思わせるデザインに作り込んでいる姿勢が感じられて良いなと思いました。かっこいいロゴなんかも入っているし。市政の中にちゃんとデザイナーが入り込んでいるのでしょう。

Home - City of Vallejo, CA

郡山市の役人が作ったようなウェブサイトと比べてしまい日本はまだまだデザインの改善余地があるなあと思わされました。反面、アメリカはそれが行き過ぎているように見えることもあって(外見をよくしすぎて中身が伴わない的な)それはそれでどうなのでしょう。とにかく外見を整えないと土俵に上がれないような文化がある感じはしました。

話を凧揚げチームに戻して、リーダーのオニールさんはTEDにも出られていた方で熱く凧揚げ愛を語っておられました。「凧揚げは人生を変えるわよ」

www.youtube.com

彼女のようにまっすぐピュアに自分の好きなことを突き詰めている人があらゆる分野でいるのでしょう。Maker Faire の会場を見渡してもそれを感じることができます。ロボットでもゲームでも縫物でも凧揚げでも木工でも楽器作りや電子工作でもなんでも良いので、たとえビジネスにならなくもそれが好きでそれを通して人生を表現している人たちがいます。そんな人たちを周りのひとは変に思わないどころかリスペクトさえしているように見えます。このような人たちが遍在していて根っこにしっかり張り付いているからこそ、何かの拍子にそれが大きなビジネスにつながるのだと友人が教えてくれました。AppleしかりNvidiaしかり。はじめから狙って今の形のスマートフォンができるわけはないですよね。なんかゴソゴソやっているうちにいろんなものが溜まっていって気づいたらこれ作れる!ということになったのでしょう。まっすぐに楽しんでものづくりをしていこうと改めて思わされました。

さて、怒涛の3日間が終わり撤収後はもう一泊Vallejoに滞在して次の日はせっかく北カリフォルニアまで来たのでワインで有名なNapaまで足を伸ばすことにしました。

ダウンタウンをぶらつきつつ案内所で近くのワイナリーへの行き方を教えてもらいました。

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ワイナリーの周りには大きな庭がありワインとおつまみを買ってくつろぐことができます。ゆったりとした時間がながれていました。北カリフォルニアを感じる良い旅となりました。その後数日、San Joseに滞在して最後の滞在先San Franciscoへ向かいました。

San Franciscoでは2日ほど滞在し、ぶらぶらと町を歩いたのですが最大のハイライトはタクシーに乗ったことです。

私へのサプライズということで用意してくれた無人タクシーだったのでした。はじめは少し怖かったですが10分もすると信頼しきっていました。加速減速がスムーズだし混雑をさけて車線変更してくれるし頭の良い車だなと感心しきりでした。最終日、空港までの有人UBERが怖く感じたほどです。ここまで行くのに相当トライアンドエラーを繰り返しているはずですが何か余裕でやっているようにも感じてしまいました。きっとこの技術も多数のまっすぐ突き進んでいる変人たちの集積の上に成り立っているのでしょう。そういう意味で日本も「自動運転」とか「AIでなんちゃら」とかいうゴールのようなものを目指して旗を振る前に凧あげオバサンと一緒に凧をあげることから始めてみてはどうでしょうか。