丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

丸太小屋の小道具たち① 3次元印刷機

弊社開発室、通称”丸太小屋”にある小道具を少しづつ紹介していきます。
第一弾は3Dプリンターです。

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UP BOX+

試作、少量生産の道具として今やなくてはならない存在になりつつありますが、ひと昔前には試作時の筐体として削りだしや粘土品、少し高級になると注型品などが使われていました。大企業になると3Dプリンタの1種である光造形機で 試作品を作ることもありますが、どれも単価や機材の値段が高く一般の方や中小企業で使うには少し躊躇してしまいます。

2012年頃から段々と、積層型(溶かした樹脂を積み上げて形をつくる方式)の3Dプリンターが認知され始め、値段もそれなりに安くなってきました。 運が良いことに、私が機構設計を始めた時期と3Dプリンターが普及してきた時期が重なっていたため、 自分で設計したケースやらホルダーやらちょっとした小物をすぐに印刷機に送って実物にすることができました。

 

初めに購入したのはMakerBot社のReplicator 2 でした。当時は日本に代理店がなかったので直接アメリカから購入して トラブルが起きた時なども、インターネット上の情報を頼りになんとか修理して使っていたのを覚えています。 壊せば壊すほどプリンターの使い方を覚えていったので、その後の新しいモデルが出てきた時も問題なく動かすことができました。現在は主にUP BOX+という機種でABS樹脂を使った筐体製作をしています。 

3Dプリンターで筐体設計なんて頼りない。どうせ試作品だけでしか使えないでしょ」というプロフェッショナルな声が聞こえて来ますが、 3次元印刷には3次元印刷なりの設計技法・芸風があり、それをしっかり認識したうえで設計すれば強度的にも外観的にも 金型・射出成形品に負けないくらいのものを作りだせると思っています。

このあたりの芸風については、また次回以降に書いていきたいと思います。

 

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アイリスオーヤマ会長講演会@産業博2018

 

 

昨年、郡山市で開催された産業博というイベントに参加しました。

イベントの目玉の一つとしてアイリスオーヤマ(株)の大山健太郎会長の講演会があり、お話を聴いてきました。

アイリスオーヤマのはじまり

アイリスオーヤマといえばLED照明のメーカーというイメージがありましたが、元々はプラスチックのブロー成型を行っていた会社で、大山会長が19歳の時、彼の父親の事業を引き継ぐ形でスタートしたそうです。

初めは社員5人の小さな会社で、事業内容も特に独自性のあるものではなかったため、自分で仕事を選ぶことができずとにかく、お客さんのところに足を運び他の先輩企業や大企業がやりたがらない泥臭い仕事を喜んで引き受けていたそうです。

そのうちに、口コミで仕事が入るようになり徐々に規模を大きくしていったそうです。「はじめから儲けようとしてはだめだ」と仰っていたのが印象的でした。

それまでは下請けとしての仕事がほとんどでしたが、当時の大山会長は何としてもメーカーになって自社で価格を決められるようになりたいと考えていました。

自分の会社でできる範囲で何が作れるだろうと考え、養殖用のプラスチック製のブイ(浮標)や苗木の育苗箱などのヒット商品を生み出していったそうです。


②製品開発の考え方

製品を開発するにあたり、いつくか考え方があるそうです。

一つ目がプロダクトアウトという考え方。これは自分たちが作りたいもの、自社の技術で作れるものを作るという考え方です。要するに作り手の事情を優先する考え方で、ともすると顧客ニーズとずれたものを作ってしまったり、製品単価が原価の積み重ねの考え方をするため高くなりがちになるそうです。

二つ目がマーケットインという考え方で、こちらはお客さんが望むものを作るという考え方です。一見あたりまえの考え方ですが、この考え方では最終的には過当競争にさらされることが多いとのこと。

三つ目がアイリスオーヤマさんが実践されているユーザーインという考え方で、これは自分がユーザーになってほしいもの、現状不満があるのであったらいいなと思うものを開発するという考え方です。

この考え方で開発をしていくと新たな需要・市場を作り出せるので比較的過当競争に巻き込まれにくく、独自性の強い商品を作れるとのことでした。

この話を聴いて、自分の考え方と照らし合わせてみると、どの考え方も部分的には取り入れていると感じました。業務をしている中でお客さんから色々な使用用途を聞くので、こんな商品があったらいいだろうという予測をして新商品の開発をスタートします。スタート地点はマーケットインで、新商品自体は超音波センサ関連であることが
多いのでプロダクトイン、値段の決め方も基本的にはプロダクトインであることが多いように思います。

ユーザーインという考え方は民生品であれば割と実践しやすいと思うのですが、我々産業用センサーですと用途が鉄道、高速道路、特殊車両など特殊な現場で使われることが多いため、自分でこれが欲しいと思う機会はほぼなく、あくまで予測で作り始めることが多いです。作り途中でお客さんからフィードバックを頂いて設計変更を入れることが多々あります。最終的なユーザーが先の先にいる場合もあり、いかに使い手の方とコミュニケーションをとりユーザーインの考え方を取り込むことができるかが、良い商品を最短で作れるかどうかにかかってくると思います。

アイリスオーヤマさんは値段を先に決めてから製品開発を進めるそうです。会長曰く「原価の足し算では知恵がでない」とのこと。

産業用センサーですと民生品ではないため値ごろ感というものがわかりにくいこともあり、どうしても原価の積み重ねの考え方になり、特に新商品だといつの間にか予定の倍近く原価がかかってしまったということもあります。そういう意味で、作り手の理論で作っていないかということを今一度反省した次第です。

大山会長のお話しはYOUTUBEにたくさんアップされているので、ご興味のある方はぜひ! 大変勉強になりました。

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大山会長