丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

石膏3Dプリント向け色付きデータの作製

今日はちょっと特殊な3Dプリント部品のデータの作り方を書いていきます。

材料として使うのは石膏です。よく色付きフィギュアなどで使われる材料ですが

今回石膏を使う理由は高温部分に使われるためです。ABSだと変形してくる100℃以上

の環境で使う部品を印刷します。

石膏印刷の場合、色データをつけると色付きで印刷できます。

今回は黒色にしたかったので作製した3Dデータに色を付ける方法を説明していきます。

ちなみに色指定なしで印刷するとオフホワイトのような色で印刷されます。

 

1. blenderのダウンロード

色データを付けるため、blenderというソフトをダウンロードします。

www.blender.org

ソフトを開いたら、作製した3Dデータをインポートします。

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3Dデータをインポート

どどん!インポートされました。つづいて右側ウインドウのmaterialというタブを

クリックします。+ new のボタン(Add a new material) を押すと右下のような

球が描かれたウインドウなどが現れます。

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Materialをクリック

つづいて、右下ウインドウのDiffuseと書いてある文字の下の白い四角エリアをクリックします。

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Diffuseをクリック

 すると、虹色の円と白→黒の棒が表示されます。

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色選択

今回は黒色にしたいので右側の白黒コントラストの部分を一番下の真っ黒まで引っ張ります。

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真っ黒

データの色が真っ黒になりました。この状態にしたら今度はエクスポートします。

obj.という拡張子で保存します。

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obj.で保存

保存をするとobjというメインの3Dデータファイルとmtlファイルという色データの2つ

が保存されます。これらを一つのフォルダに入れてzipします。

データが完成したので3D印刷サービスに入稿します。

最近ではshapawaysなど海外の印刷サービスも増えてきましたが、石膏印刷に関しては国内のDMM.makeが一番だと思います。短納期で対応してくれることと、石膏の表面がきれいです。値段もリーズナブルです。

make.dmm.com

3Dデータの板厚が2mm以上ないとシステム的にはじかれますが、担当者と交渉して

「破損しても問題ないです」と言えば印刷してくれます。上記のデータにも2mm以下の部分はありますが、メインの板厚が2mmですので強度的には問題ないです。

 

今回のデータ作製を行った経緯を振り返りますと

①石膏プリントしたい

②色を付けたいが自分で塗装するのがめんどくさい

③データに色をつけて印刷してもらおう

という流れです。色なし(オフホワイト色)でも値段が変わらないので、興味のある

方はトライしてみてください。

 

スピントロ二クスが世界を変える!?

今日は東北大学のOB会が主催している講演会に行ってきました。

お題目はズバリ「スピントロニクスが世界を変える」です。大学時代に磁性材料の研究室に所属していたこともあり、興味があったので顔を出してみました。

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大野教授

講師は東北大学総長の大野英男さん。この分野では有名な方で、将来のノーベル賞候補ともいわれているそうです。

話の内容としてはスピントロニクスとはどのようなものか、なぜ今注目されているのか、技術的な課題とブレークスルーについて、将来の展望などについてでした。

 

大まかにまとめると、現在の半導体集積回路で使用されている揮発性メモリ(電源を切ると記録がなくなるメモリ)をスピントロニクスの技術を用い、磁性を持たせたメモリにすることで不揮発性となり、電源を切ってもメモリの記録が失われなくなるということです。これにより必要のない時間帯はメモリの電源を切ってもよくなるので大幅な省エネルギーとなるそうです。

 

現在の超情報化社会、SNS社会、YOUTUBE社会を今の技術だけで支えようとすると電力的に過大な負荷がかかるようです。データセンターなどで使われる電力が半端ないそうです。数十年後は全世界の20%程度の電力が情報通信の分野だけで消費されてしまうという試算もあるようです。

 

将来の情報通信の基盤を支えうる技術だと思いますので、国をあげて支援をしていく必要があると思いました。技術的に量産が可能になったときに、日本としてはどういう立ち位置をとるのかも非常に興味深いです。かつての栄光の半導体全盛時代のように工場をつくって自社で量産するところまでやるのか、量産する方法・システムを切り売りしていくのか、GAFAなどの情報支配層と連携していくのか。。。

 

地味ではありますがこういったハード、材料系のしっかりとした技術を積み重ねてきたことは日本にとって大きな強みだと思いますので、産業的に発展してしっかりと利益をとれる体制にもっていってほしいと思います。

 

我々メーカーと違い世界を変えることを目標に実用化できるかどうかもわからない中、超長期スパンで研究や試作に取り組むかれら研究者のモチベーションは一体何なのだろうと思うことがあります。それが理解できなかったので私は大学院に行かなかったのですが。。。そんな疑問にちょっと答えてくれる大野さんのインタビューがありましたのでご興味あるかたはぜひ。

 

shinbun.fan-miyagi.jp

 

ひさびさに味わうアカデミックな雰囲気も良いものですな~

 

 

 

全ネジの切断と後処理について

アルミの全ネジがない!?

製品を軽くするため使用している部品の材料を変えることがあります。今回は80mmのステンレス製の全ネジをアルミ製にできないかと検討しました。あれこれ探してみましたがどうも長さ指定のアルミ全ネジが無いようでした。

 

唯一1000mmのアルミ全ネジがここから入手できそうだったので早速注文してみます。

neji-one.com

 

切断

部品が届いたので切断してみます。強力なニッパーで思い切りよく切ります。

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強力ニッパーで切断

切れました。このままだとバリが残っていてナットが入らないので後処理をしていきます。

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バリが残る

まずはグラインダーで少し先端を削ります。

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グラインダー

さらに先端部のネジ山の入り口がきれいになるようにやすりをかけます。

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やすりで削る

 

先端がきれいに仕上がりました。きれいにナットが入ってくれます。

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完成

 

 

ディスクリート部品の整理方法

整理整頓のお話

実験用の回路を組む際にいろいろな値の抵抗を使う機会が多く、以前購入した抵抗セットをあさりながら実験を進めています。この抵抗セットは数Ωから1MΩまでのディスクリートの抵抗が10本ずつ入っているもので、すべてまとめてビニール袋に入っていてほしい値の抵抗を探すのがいちいち大変でした。

 

なにかいい整理方法がないかとあれこれ探してみました。部品用の小さなプラスチックケースにしようかと思いましたが、かさばるのでもう少しスマートな収納方法はないものかと見ていたところ、、、ありました!

名刺入れファイルを使おう

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名刺入れファイル

1ページに10パック入るので抵抗値の小さい順に並べていきます。部品が小さいのでこのスペースに入るし何よりかさばらないので探す時もラクです。

 

忙しい時こそちょこっと手を休めて整理する時間も必要かなと思います。

 

 

方向判別センサー開発の経緯

今回はリニューアルした方向判別センサーOM-DR4Cについて書きたいと思います。

まずは製品のご紹介から。こちらが方向判別センサーOM-DR4Cです↓↓

www.youtube.com

このセンサーを使うことにより移動している物体の方向が判別できます。工場の出入り口などに設置して、出ていく車両のみ検知し周囲に注意喚起するなどの使い方がされます。

センサーの原理は非常に簡単で2つのセンサーをある間隔離し、それぞれのセンサーが物体を検知する時間差を利用して方向を判別しています。従来は2つのセンサーを別々に配置し、それぞれのセンサーから信号線を引いてきて専用のコントローラユニットに接続するという使い方がされており、非常に施工に時間がかかるという欠点がありました。

なんとか2つのセンサーとコントローラ部を一体で製作できないかとの思いから3年ほど前から本格的に開発を始めました。1年ほどで製品は完成し基本的な機能は実現したものの、まれに発生するロック現象(誤出力)などに悩まされ製品の品質を上げていくのに数年費やすことになるとはその時点では考えていませんでした。

距離調整ボリウムなどの操作部分を含む筐体全体の見直しを図り、今年の初めにリニューアルしましたので、今後とも方向判別センサーOM-DR4Cをよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

「お仏壇のはせがわ」に見るものづくり企業のあり方

先日、たまたま都内の「はせがわ」の実店舗に入る機会がありました。

「お仏壇のはせがわ~」のあのはせがわです。

 

店内はお香のいい匂いが立ち込めており、落ち着いた雰囲気でした。

仏具を扱っているので、保守的なイメージがあったのですが店内を見ていくと徐々にそのイメージが壊されていきました。

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リビングに違和感なく溶け込む仏壇

仏壇やお位牌といった昔からあるものは形を変えてはいけないものだと思っていたのですが、はせがわさんは現代のライフスタイルに合わせてデザインを刷新し、若い世代が祈りの場を取り入れやすくしているようです。

 

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ガラス付きの仏壇

手入れが楽になるようにガラス付きの仏壇や、香炉とりんが一体になったものなど細かい工夫でデザインが刷新されているものが多数展示されており、仏壇のイメージが根底から覆されました。すべての道具をそろえるのは大変で大掛かりになるという印象があったのですが、ある程度簡素化したものであったりリビングとの一体感をもたせたものなどを提案することで、今まで関心はあったけれども敷居が高くて手が出なかった層にも届けていくという姿勢が感じられました。この姿勢はものづくりをしていく上で私が大切にしたいと思っていることと同じです。モノを通じて、コトを豊かにしていくこと。はせがわさんの場合、仏壇を通して祈りの場を提供していく、取り入れやすくしていくということ。とくに先祖供養の意識が希薄になってきている日本だけに、彼らが提案していることの意義は大きいと感じています。

 

以前、ブログで紹介した奥山清行さんデザインのトラクターの場合は、スタイリッシュな農機具を通じて農業という業界イメージをクールなものに変えていくということ。

弊社の場合は超音波センサーを通じて、より安全なインフラ運用を支援していくということでしょうか。

今回、はせがわさんの店舗を訪れたことで、どの業界も変化していかなくてはならないのだということを再認識しました。もちろん伝統的なものはきちんと継承しつつ、時代にあわせてお客さんの要望に合わせて(合わせる前にこちらから提案か)、新しいものを作っていく必要があるのでしょう。

 

ASA樹脂という選択

現在、一般的な3Dプリンタの材料としてPLA(Poly-Lactic Acid)とABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)があります。
弊社では強度や耐熱性の点で主にABSを使用して試作品や量産品を製造しています。
PLAは大型の印刷物でも反りが少ないため、治具などを作るときに使っています。

高性能なABSですが弱点として耐候性があまり良好ではなく、紫外線に長時間晒されると強度が劣化します。そのため屋外で長時間放置される現場にはあまり向いていません。

板金カバーなどでABS製の筐体を太陽光から守るようにしていれば、大きな問題には
なりませんが、単体でABS樹脂を晒し続けると強度の劣化につながります。

そこでABSの耐候グレードとして登場するのがASA樹脂(Acrylate Styrene Acrylonitrile)です。

www.plastics-material.com


"ABS樹脂のB成分(ブタジエンゴム)の代わりに、弾性のあるアクリレートを用いた樹脂である。"とあるように基本特性はABS樹脂と似ていますが、ブタジエンゴムの成分を含まない分耐候性に優れているそうです。

弊社においても一部鉄道向けセンサーにこのASA樹脂を使っており、基本特性は理解していましたが試作用に3Dプリンターで使えるフィラメントが果たして存在するのか!!?ということで探索しておりました。(ちょうど屋外仕様での新製品制作の案件があったこともあり)


ありました!!!
こちらです。

idarts.co.jp

早速、新型ケースを刷ります。

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ASA製のセンサーケース



見た目と触った感じはABSとほぼ同じでしたが、板形状で硬さを比べると若干ASAの方が弾力がある感じでした。アクリルゴム成分が弾力を生み出しているのだと思います。

本格的に屋外で使用される製品を作る方にはぜひおすすめしたい材料です。