丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

方向判別センサー開発の経緯

今回はリニューアルした方向判別センサーOM-DR4Cについて書きたいと思います。

まずは製品のご紹介から。こちらが方向判別センサーOM-DR4Cです↓↓

www.youtube.com

このセンサーを使うことにより移動している物体の方向が判別できます。工場の出入り口などに設置して、出ていく車両のみ検知し周囲に注意喚起するなどの使い方がされます。

センサーの原理は非常に簡単で2つのセンサーをある間隔離し、それぞれのセンサーが物体を検知する時間差を利用して方向を判別しています。従来は2つのセンサーを別々に配置し、それぞれのセンサーから信号線を引いてきて専用のコントローラユニットに接続するという使い方がされており、非常に施工に時間がかかるという欠点がありました。

なんとか2つのセンサーとコントローラ部を一体で製作できないかとの思いから3年ほど前から本格的に開発を始めました。1年ほどで製品は完成し基本的な機能は実現したものの、まれに発生するロック現象(誤出力)などに悩まされ製品の品質を上げていくのに数年費やすことになるとはその時点では考えていませんでした。

距離調整ボリウムなどの操作部分を含む筐体全体の見直しを図り、今年の初めにリニューアルしましたので、今後とも方向判別センサーOM-DR4Cをよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

「お仏壇のはせがわ」に見るものづくり企業のあり方

先日、たまたま都内の「はせがわ」の実店舗に入る機会がありました。

「お仏壇のはせがわ~」のあのはせがわです。

 

店内はお香のいい匂いが立ち込めており、落ち着いた雰囲気でした。

仏具を扱っているので、保守的なイメージがあったのですが店内を見ていくと徐々にそのイメージが壊されていきました。

f:id:Ohmic-Electronics:20190422164045j:plain

リビングに違和感なく溶け込む仏壇

仏壇やお位牌といった昔からあるものは形を変えてはいけないものだと思っていたのですが、はせがわさんは現代のライフスタイルに合わせてデザインを刷新し、若い世代が祈りの場を取り入れやすくしているようです。

 

f:id:Ohmic-Electronics:20190422164051j:plain

ガラス付きの仏壇

手入れが楽になるようにガラス付きの仏壇や、香炉とりんが一体になったものなど細かい工夫でデザインが刷新されているものが多数展示されており、仏壇のイメージが根底から覆されました。すべての道具をそろえるのは大変で大掛かりになるという印象があったのですが、ある程度簡素化したものであったりリビングとの一体感をもたせたものなどを提案することで、今まで関心はあったけれども敷居が高くて手が出なかった層にも届けていくという姿勢が感じられました。この姿勢はものづくりをしていく上で私が大切にしたいと思っていることと同じです。モノを通じて、コトを豊かにしていくこと。はせがわさんの場合、仏壇を通して祈りの場を提供していく、取り入れやすくしていくということ。とくに先祖供養の意識が希薄になってきている日本だけに、彼らが提案していることの意義は大きいと感じています。

 

以前、ブログで紹介した奥山清行さんデザインのトラクターの場合は、スタイリッシュな農機具を通じて農業という業界イメージをクールなものに変えていくということ。

弊社の場合は超音波センサーを通じて、より安全なインフラ運用を支援していくということでしょうか。

今回、はせがわさんの店舗を訪れたことで、どの業界も変化していかなくてはならないのだということを再認識しました。もちろん伝統的なものはきちんと継承しつつ、時代にあわせてお客さんの要望に合わせて(合わせる前にこちらから提案か)、新しいものを作っていく必要があるのでしょう。

 

ASA樹脂という選択

現在、一般的な3Dプリンタの材料としてPLA(Poly-Lactic Acid)とABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)があります。
弊社では強度や耐熱性の点で主にABSを使用して試作品や量産品を製造しています。
PLAは大型の印刷物でも反りが少ないため、治具などを作るときに使っています。

高性能なABSですが弱点として耐候性があまり良好ではなく、紫外線に長時間晒されると強度が劣化します。そのため屋外で長時間放置される現場にはあまり向いていません。

板金カバーなどでABS製の筐体を太陽光から守るようにしていれば、大きな問題には
なりませんが、単体でABS樹脂を晒し続けると強度の劣化につながります。

そこでABSの耐候グレードとして登場するのがASA樹脂(Acrylate Styrene Acrylonitrile)です。

www.plastics-material.com


"ABS樹脂のB成分(ブタジエンゴム)の代わりに、弾性のあるアクリレートを用いた樹脂である。"とあるように基本特性はABS樹脂と似ていますが、ブタジエンゴムの成分を含まない分耐候性に優れているそうです。

弊社においても一部鉄道向けセンサーにこのASA樹脂を使っており、基本特性は理解していましたが試作用に3Dプリンターで使えるフィラメントが果たして存在するのか!!?ということで探索しておりました。(ちょうど屋外仕様での新製品制作の案件があったこともあり)


ありました!!!
こちらです。

idarts.co.jp

早速、新型ケースを刷ります。

f:id:Ohmic-Electronics:20190417193833j:plain

ASA製のセンサーケース



見た目と触った感じはABSとほぼ同じでしたが、板形状で硬さを比べると若干ASAの方が弾力がある感じでした。アクリルゴム成分が弾力を生み出しているのだと思います。

本格的に屋外で使用される製品を作る方にはぜひおすすめしたい材料です。

 

 

 

 

 

超音波の干渉問題あれこれ 〜取付現場から〜

昨日は弊社センサーの調整作業のため、関東エリアに出張しておりました。
使われているセンサーがこちらのOM8タイプです。耐候タイプの丈夫なセンサーです。
センサーの目的は車庫に入る列車を検知し、車庫内で作業をしている人に知らせるというものです。入庫車両のみを検知するため2つのセンサーを使い、片方が検知した後、もう片方が検知した場合のみ出力するという使い方をされています。逆の順序でセンサーが検知した場合は、出力しないため車両の方向判別ができるのです。
 
昨年、同じ現場で1レーンこのセンサーを取り付け、今回が2レーン目ということで取付状態を確認したところ、、、凍りついてしまいました。。。これはマズイ…

f:id:Ohmic-Electronics:20190308083027j:plain

やってはいけない取付
↑このような取り付け状態だったのです。
何が問題となりそうかお分かり頂けますでしょうか?
 
↓もしもこのような取り付けであれば問題ないです。

f:id:Ohmic-Electronics:20190308083544j:plain

位置をずらす
↓こちらも問題ないです。

f:id:Ohmic-Electronics:20190308083620j:plain

同じ方向に取り付け
 
そうです!現場で取り付いていたセンサーは、それぞれ真正面に隣のレーンの
センサーがお互い顔を見合わす方向に設置してあったのです。
このように設置してしまうと、検知物体がないにも関わらず、お互いの発振音を
返波として捉えてしまい、誤出力してしまうのです。
 
案の定電源を入れるとセンサーがかなりの頻度で誤出力していました。
解決方法は上図のようにそれぞれのセンサー群の位置をずらすか、お互い同じ
方向を向くようにする、あるいはそれぞれ異なった周波数のセンサーを使用することです。
 
今回はセンサー取り付け用のポールをすでに地中深く埋め込んでいたこともあり
センサー位置を変える方法が取れません。周波数の異なったセンサーも持ち合わせていなかったためこの方法も取れません。
 
しかし、ある方法を使ってそのままの位置で解決することができました。
 
ヒントは2つのセンサーの型式とこちらの記事を!
 
今回の件で改めて現場に行くことは大切だと思い知らされました。
また、事前に最悪のシナリオを想定して客先に確認作業をしておくことが重要
なのだと学びました。

f:id:Ohmic-Electronics:20190308084428j:plain

実際の取付現場



 
 
 

新型プリンターG3310を買いました

先月から事務所のプリンターの調子が良くなく、印刷を指示しても紙が流れていかず
困っておりました。長年使ってきた古い型式のものでしたので、期末ということもあり新しいプリンターに買い替えることにしました。


注文したのはキャノンのG3310です。

f:id:Ohmic-Electronics:20190308081406j:plain

CANON G3310


選んだポイントはズバリ2つ!
①大容量のインクタンク
wifi仕様(USBケーブルでパソコンと接続しなくて良い)


①については今までのプリンターが割と早くインク切れするのにインク自体がかなり高価であるという不満がありました。これは皆さんご経験あるのではないでしょうか。ハードウェア(プリンター)自体は安く売って材料(インク)で儲けるという方式だとは思うのですが、あまりに経済性がなく顧客からの不満が多くメーカー側が改善せざる終えなくなったのだろうと思います。


②については今まで有線式のプリンターを共有していたため印刷ごとにUSBケーブルを抜き差ししなければならず、少々不便でした。


このプリンターにしてからは非常に快適に使用できています。

おそらくインクの買い替えサイクルも伸びることでしょう。コピー、印刷はもちろんスキャンもできますので、これ一台でひと通りの印刷関係の仕事ができます。これから買おうと思っている方には是非おすすめしたいです。

社員旅行に行ってきました -築地場外~豊洲市場-

2/16(土)に日帰りバスツアーで築地場外と豊洲市場見学に行って来ました。豊洲市場には弊社のセンサーが一部使われており、一度は現地に行ってみようということで今回の社員旅行が決まりました。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217175856j:plain

弾丸バスツアー

朝5時起きで7時前にバスに乗車、4時間ほどかけ築地場外に到着しました。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217180032j:plain

築地場外

土曜日ということもあり、場外は人、人、人。外国人も多く大変な賑わいでした。人を眺めているだけでも面白い場所です。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217180211j:plain

マグロをさばくお兄さん

まずは腹ごしらえで海鮮丼屋さんへ。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217180450j:plain

丼メニュー

私はマグロの漬け丼とウニの寿司セットを頂きました。ウニが新鮮でとても美味しかったです。腹ごしらえをしてから場外をぶらぶら。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217181513j:plain

たわし

魚屋さんが多い中、雑貨屋さんもちらほら。私はこのたわしのさわり心地が気に入りました。1時間ほど散策し、次は豊洲市場へ移動です。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217181946j:plain

豊洲市場

まずは仲卸売場へ

f:id:Ohmic-Electronics:20190217182029j:plain

仲卸売場棟

が、しかし中は多くの店がすでにシャッターを下ろしており、数十分滞在すればもう何も見るものがないような状況でした。。。業者が使う施設であるとはいえ、せっかく見学ルートなども作ったのだからもう少し施設のデザインという意味で工夫があればと思いました。時間帯が午後だったのもあるかもしれません。施設は閉鎖型で清潔ですが、まだ文化というか人間臭さが無いようでした。

豊洲市場は少し残念でしたが、今回のバス旅行の最大のハイライトはバスガイドさんでした。歌あり、ダジャレあり、落語あり、感動ありの大変愉快なガイドさんでした。福島県西郷村出身の八巻ふさくさんです。

www.guid-fusaku.com

 

長時間の移動でしたが彼女がぶっ通しで笑わせてくれたのであっという間に時間が経ちました。バスガイドを通じてここまで芸と人間性が磨かれるものかと感銘をうけました。彼女を見ながら人とのかかわり方やプロとしての在り方を考えさせられました。同時に国の歴史、文化をもう一度見勉強し直す必要があると感じました。日本の文化に対する自分の知識があまりに浅いと感じました。忙しい毎日ではありますが、なるべく時間をみつけて色々な場所に足を運んでいきたいです。

3Dプリント小技集 ③印刷の向き

今日は3Dプリント時の印刷の向きについて書いていきたいと思います。
印刷の向きは印刷時間や部品の強度に関わってきますので、重要なポイントの
ひとつです。


せっかくですので最近私が作ったこちらの部品を例に見ていきましょう。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217164541j:plain

Magnet Holder



これは高所作業車用センサーにマグネットを取り付けるためのアタッチメントです。さて、この部品をどの向きで印刷しましょうか。。

 

原則① アンダーカットがない方向(サポート材が付かなくなる方向)
積層型の3Dプリンタの場合下の部分から形状を作っていく(積み上げていく)ため、
垂直方向に見て初めは形状がなかった部分に後から形状が出てきたりすると
形状が出てくるまでの部分にサポート材と呼ばれる樹脂が付きます。この部品の場合、このような向きで印刷するとサポート材が多くなり、印刷時間の増加とサポート材を剥がすのに時間がかかってしまいます。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217165801j:plain

サポート材がつく向き

よって、原則①に則って向きを決めると下のような向きになります。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217170009j:plain

サポート材が少なくなる向き

 

原則② 強度が保たれる方向

印刷物の形状によっては力がかかりやすく折れたり剥がれたりしやすい部分が出来てしまうことがあります。この部品の場合、2つの丸穴が開いている箇所が弱い部分であり原則①の向きで印刷すると積層面と力の方向の関係で下のように折れてしまうことがあります。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217171944j:plain

折れやすい箇所

そこで印刷の向きをこのように変えてみます。すると積層面と力のかかりやすい方向が垂直方向に近くなるため折れにくくなります。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217172801j:plain

折れない方向

 今回の部品は力がかかる場所に用いられるため、サポート材は増えてしまいますが原則②の方向で印刷することにしました。印刷後の部品がコチラ。

f:id:Ohmic-Electronics:20190217174050j:plain

印刷後の部品(マグネット付き)

基本的には原則①の方向で、強度が関わる場合は原則②も気にしながら印刷方向を決めています。参考になれば嬉しいです。

 

<関連記事>

 

ohmic-electronics.hatenablog.com

 

 

ohmic-electronics.hatenablog.com