丸太小屋日記 ~オーミック電子の開発室から~

超音波センサーメーカー、オーミック電子の公式ブログです。

ハイウェイテクノフェアに出展して

毎年11月になると高速道路に関連した技術を展示するハイウェイテクノフェアが東京ビッグサイトで開催されます。

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一昨年の2017年に当時開発していた高所作業車向けのセンサーを売り込むために
ハイウェイテクノフェアの出展企業を回ろうと思い展示会に参加しました。
 
高所作業関連の企業も多く、サンプルのデモをするたびに良い反応があり
数社から展示会後に引き合いのお話を頂きました。
 
その内の一社である首都高速技術様から共同開発のお話を頂き、昨年から
共同でセンサーの開発を進めて参りました。翌年の2018年には同展示会の
首都高ブースにて弊社のセンサーを展示させて頂くことができました。

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高所作業車用安全支援システム
きちんと説明員の方を付けてくださり、自分たちが作った製品を別の会社の
方が(自分たちよりも上手く!?)説明している姿になんだか少し不思議な気持ちに
なりました。

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説明中
お客様からの反響も大きく、おかげさまで展示会後に引き合いを頂き、実際に使用頂いて製品をさらにブラッシュアップすることが出来ました。
 
インターネットで情報が入手できるとはいえ、実際の展示会で実物を見て議論をし、その中で繋がる御縁もあると思いますので、今後も積極的に参加していきたいと思います。
 
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LEDのVf低下と定電流ダイオード

最近使い始めた定電流ダイオード(Current Regulative Diode)。

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CRD
新製品の通電試験中にLEDが光らなくなり、故障原因を調べていくとLEDのVfが低い値で固定しているようでした。
 
Vfが下がった原因ははっきりと分かりませんが、定電圧でLEDを駆動させているのが良くないのかも知れません。
 
ふむふむ。定電圧駆動の場合、温度変化による電流値の影響を受けやすいそうです。そこで、最近は15mAの定電流ダイオードを使っています。抵抗をかます必要もなく、バッテリー駆動で電圧が少々下がっても定電流が流れるので光度がほぼ一定に保たれます。しばらく使って様子を見よう。。
(LED故障などに詳しい方いればコメントくださいませ。)
 
 

工業デザイナー 奥山清行さんのこと

今日は私の好きな工業デザイナーの奥山清行さんについて書いていきたいと思います。
 
初めて奥山さんを知ったのはNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見たことがきっかけでした。
 
当時はピニンファリーナのマネージャーをされていたと思うのですが、並み居る新進気鋭のカーデザイナーたちのスケッチをことごとく(破り捨てるかの如く)ダメ出しをされていて、最高のデザインを生み出すべくチームを統率していた姿に大きな衝撃を受けました。世界最高のデザイン会社でチームを率いているのが日本人ということにとても驚きました。私は当時まだ学生でしたが、将来は彼のように世界で活躍する人になりたいと思ったものでした。
 
時は経ち、自分がメカエンジニアとして働きはじめてから、何かのきっかけで奥山さんのことが気になり、彼のことを調べ著書なども読ませて貰いました。
 
彼のデザイン哲学であるSimple, Modern, Timeless というキーワードの中で、今までの自分の経験と照らし合わせて特に共感するのがSimpleです。一見、シンプルに見える形状でもそこにたどり着くには、機能を実現させるべく様々な経過をたどった結果であることが多いと思います。けっして初めからシンプルを標榜して設計しているのではなく機能性を追求していった結果のシンプルさということです。
 

その他にも「デザインは質より量だ!」「日本人は個人でこそ世界で活躍できる!」など彼の名言が詰まった書籍「人生を決めた15分 創造の1/10000」と「100年の価値をデザインする」は特におすすめです。

 
そんな奥山さんのデザインショップが山形にあるということで、一昨年に行ってきました。

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ken okuyama design shop
 
店内にはken okuyama designがプロデュースした山形の伝統工芸品である鉄瓶や段通、木工品が展示してありました。

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店内

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鉄瓶
伝統工芸の業界では有名だが、一般にはあまり知られていない質の良い製品を
紹介していくのがデザイン会社の仕事だと店員の方がおっしゃっていました。
 
製品それ自体も素晴らしいのですが、その鉄瓶を使うことで普段よりお茶の時間が豊かになったりヤンマーさん向けのスタイリッシュな農機具でいうと、その機械を見た子供が将来農業をやりたいと志し、業界イメージを変えうる力になるということに価値があるとのことでした。
 
モノを通して豊かな時間であったり夢を提供するというあたりがモノづくりの究極のゴールなのかもしれません。
 
最後にアートとデザインはどう違うのかということを奥山さんが語っている動画がこちらです。
”アートとは自分でお金を払って、自分の芸術を究めていくこと。自分を楽しませること。デザインとはお客様のお金を使ってお客様が欲しているものごと実現させていくこと。まずは目の前のお客さんが何を欲しがっているのかを理解することが重要だ。”
 
 

高所作業車用の安全センサーを作った理由

ここ数年、特殊車両向けセンサーの引き合いが多いのですが、定期的に高所作業車向けセンサーの引き合いを頂きます。
 
話を伺うと作業者がバケットに乗り上部に移動中、構造物との間に挟まれてしまう事故が起きているとのことでした。実際の事故事例としてこのように報告されています。

www.aichi-corp.co.jp

(株)アイチコーポレーション様より
 
原因は作業者の不注意や、 そもそも作業者が資格を持っていなかったなど
様々あるようですが、このような事故が後を絶たないという事実は確かなようです。
 
現状、事故を未然に防ぐ方法としてよく使われているのが、バケットの四隅に
棒を立てる方法です。

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衝突防止用の棒
バケットが上昇していき、人体と構造物が衝突する前に四隅の棒がぶつかるので安全を確保できるという考え方ですが、デメリットとして取り付けが大変、構造物を傷つけてしまう恐れがあるということがあります。
 
そこで、超音波センサーでなんとか解決出来ないかと考え、2年ほど前から
高所作業車に特化した製品を作ることにしました。超音波センサーを使用する
メリットとしては非接触であることと、他の光センサーよりも屋外での検知能力と
検知範囲が優れていることが挙げられます。
 
コンセプトとしては①必要十分な検知範囲とすること、②取り付けおよび配線が
容易なことを掲げ、設計を進めてきました。多くの関連企業様のご協力もあり、昨年12月に高所作業車用の安全支援システムとして完成致しました。
 
 
 
こちらが実際の取り付けの様子です。
 
ご興味がありましたら是非ご連絡ください。→ t.saito@ohmic-electronics.com
3月まではサンプル品の貸し出しも対応しております。
 
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3Dプリント小技集② タッピングネジ VS インサートナット

製品の筐体を設計する場合、大きく分けて2つの部品を設計することになります。

一つ目がケースです。お弁当箱でいうところの箱です。箱の中にいろいろな具材を詰め込んだあと、そのままだと持ち運びしたときに具が溢れてしまいますので、蓋をする必要があります。この蓋が二つ目の部品で、カバーと呼ぶことが多いです。

ケースとカバーは何らかの方法で固定する必要があります。お弁当箱だとフックや
ゴムバンドなどで固定しますが、産業用の製品ではネジを使うことが多いです。

ネジによる固定には大きくわけて2種類あります。

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一つ目はタッピングネジ(写真左)を用いた固定です。ふつうネジ(写真右)とくらべてネジ山の間隔が広いことがわかります。タッピングネジは受け側の材料にねじを食い込ませて固定するものです。この場合、受け側の材料は木や樹脂などになります。日曜大工で木材の固定に使われるモクネジや絵画を壁に掛けるときに壁にねじ込むねじなどはタッピングネジといえます。産業用でも成型した樹脂ケースをタッピングネジで固定することがあります。前職で設計を行っていた車載向けのインテリア製品などではタッピングネジを使っていました。

 

もう一つはふつうネジとナットを用いた固定方法です。板金の筐体や重量のある金属部品などを固定するときはネジとナットでがっちりと固定することが多いです。

 

それでは3Dプリント材料を使う場合はどちらの固定方法を使うでしょうか....


実はどちらの方法も使っています!今のところ、下記のように使い分けています。
「小型部品や主要部分外の固定にはタッピングネジ、大型部品やメインの固定部(ケースとカバーなど)にはふつうネジ×インサートナット」

インサートナットを樹脂ケースに埋め込むことで、ふつうネジとナットによる強固な
固定を行うことができます。なぜ主要部にタッピングネジを使わないかというと、タッピングネジの受け側である樹脂のねじボスが割れてしまうことがあるからです。金型を使った射出成型品ですと樹脂が100%近く充填されるのでねじボスにタッピングネジが食い込んでもしっかり受け止めてくれるのですが、3Dプリンタだとプリンタの種類にもよりますが、ねじボスが一部中空になってしまうことがあり割れの原因になります。

そこで、インサートナットを埋め込みます。

 

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インサートナットをセットして、

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トンカチでたたきます。

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しっかりと入りました。

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このような形で3Dプリント品をしっかりとネジで固定できます。タッピングネジよりもしっかりと固定したいという方はぜひ、参考にして頂ければと思います。

 

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3Dプリント小技集 ①反り対策

3Dプリンターを使う方にとって初期設定の次に立ちはだかる問題のひとつが造形物の反りです。

産業用に一般的に使われるABS樹脂は収縮率が比較的高いので、10cm四方以上の大物を印刷するときによく反ることがあります。いろいろな対策があるようですが、私は以下の2つの方法でなんとか対応しています。

 

①射出口と印刷台とのスキマ確認

230℃くらいで溶けた樹脂が出てくる射出口(エクストルーダー)と印刷台とのあいだには僅かな隙間が必要です。この隙間が広すぎると樹脂がきれいに積み上がらないし、隙間が狭すぎると射出口から樹脂が出にくくなり、最悪の場合、樹脂が出口で固まってしまい修理が必要になります。

私の経験上、反りが起きやすいときは射出口と印刷台とのあいだが広くなっていることが多いです。「同じ3Dモデルで以前はきれいに印刷できたのになんで今回は反るんだーー」という場合はたいていこれが原因です。そんなときは付属のスキマ確認カードを隙間に差し入れてカードを動かします。

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スキマ確認

カードがスイスイ余裕で動くときは隙間が広いので、隙間を狭めます。逆にカードがぎちぎちに動かない場合は隙間が狭いので広い方向に調整します。ベストな隙間はカードがわずかな抵抗をもって動く状態です。動くのだけれどわずかに引っ張られている感じです。

②造形物の形状変更 (外径段差付け)

そもそも印刷された造形物が反る原因は樹脂の収縮です。射出口から出た樹脂が冷めていく過程で収縮するのですがそのときに前の層をわずかに引っ張り上げ、結果的に端の方からベロりとはがれていきます。

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造形物の反り

 

そこで端の方がはがされやすいのであれば初めに端だけしっかり印刷してから、中央部を印刷すればよいというアイデアが浮かびます。このような3Dモデルで外径部だけ数ミリ段差をつけています。

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外枠段差付け

このようにすると初めに外径部だけが印刷されて中央部からの収縮の影響を受けないため、きれいに印刷できることが多いです。

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反り無し

反りが起きた時はぜひ試して頂ければと思います。

郡山で「ものづくり」をするメリット

今日は開発小屋が拠点を構えているここ福島県郡山市でものづくりをする上でメリットとして感じたことを書いていきます。

 

①広い!スペースがある!

地方都市ということで車社会であることから、どの会社も広い駐車場を持っています。
我々はセンサーを扱っていることもあり、なにかと屋外での実験・検証が多く直ぐに実地評価ができるのは非常にありがたいです。加えて事務所前の通りはかなりの交通量なので車両検知センサーの検証をするのにうってつけです。下の動画のセンサーも事務所前の通りで撮影しています。

www.youtube.com

 

②ホームセンターがたくさんある

製品開発をしていると何かと部品が必要になります。今はモノタロウさんやミスミさん、秋月さん、ネジのwilcoさんなど素晴らしい通販のサービスがあるので、私もよく利用しています。ただし、その日どうしてもネジが欲しいとかスプレーが欲しいとか現物を見たいという状況になった時にホームセンターが近くに複数あることは非常に便利だと感じています。先週末も近くのビバホームで超音波センサー用の防振ゴム、ゴム用接着材などを買いました。ホームセンターはうろうろするだけでもかなり楽しめます。見たこともないような機材や部品、材料があると興奮するのでリフレッシュできるいい場所だと思います。

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ビバホーム


③困った時のハイテクプラザ

前回の記事で書いた3Dプリンター以外にも開発小屋にはいくつか機材があるのですが、どうしても特殊な機械でないと加工できないという場合に利用できるのが、県の施設である福島県ハイテクプラザです。

ここにはフライス盤、ボール盤、CNC切削機をはじめ巨大な加工機がたくさんあり、県内の企業であれば格安で利用できます。加工機以外にも恒温恒湿器や振動試験機などの設備もあるため品質保証のテストをするときにも度々利用させて頂きました。設備ごとに担当の職員の方に使い方を丁寧に指導して頂けるので使いやすかったです。

1番良いことはいつ行ってもたいてい機械が利用できるということ。これが東京などの施設だと予約でいっぱいになり、なかなか好きな時間に利用できないと思います。職員の方と仲良くなると、機材の使い方や工具の選定などについてより詳しくアドバイス頂けることがあります。

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ハイテクプラザの巨大振動機

以上、3つ挙げてみましたがそのほかにも通勤時間が短いことや都会に比べると静かなので創作活動に集中しやすいなどの利点もあるかもしれません。
ハードウェアエンジニアよ、地方へいらっしゃーい